みなさんこんにちは
先日レビューを上げた50mmのレンズですが、50mmって難しいですよね。
撮影がというより、レンズ選びがです。
種類もたくさんあるし、驚くほど安いレンズもあれば非常に高価で逆に驚くようなレンズもあります。不思議なことに、それが同じメーカー内に存在しているのですから、いよいよ意味がわかりません。
僕はキヤノンのカメラを主に使うユーザーなので、キヤノンを中心にみてみましょう。
50mmのレビューはこちら
目次
キヤノンEFレンズ50mmの歴史
中古でも買えるので、過去にあった製品から現在(2018.1)までのラインナップです。参考として、レンズメーカー製のものも掲載しておきますが、そちらは現在販売中のものだけをピックアップしています。
メーカー 製品名 |
構成 | 最短撮 影距離 |
絞り羽根 枚数 |
フィルター (mm) |
径x長さ(mm) 重さ(g) |
発売 開始 |
価格 (税別) |
販売状況 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
キヤノン EF50mm F1.8 |
5群6枚 | 0.45m | 5枚 | 52mm | 67.4×42.5mm 190g |
1987年 | 25,300円 | 生産終了 |
キヤノン EF50mm F1.0L USM |
9群11枚 | 0.6m | 9枚 | 72mm | 91.5×81.5mm 985g |
1989年 | 366,000円 | 生産終了 |
キヤノン EF50mm F1.8 II |
5群6枚 | 0.45m | 5枚 | 52mm | 68.2x41mm 130g |
1990年 | 12,000円 | 生産終了 |
キヤノン EF50mm F1.4 USM |
6群7枚 | 0.45m | 8枚 | 58mm | 73.8×50.5mm 290g |
1993年 | 49,000円 | 販売中 |
キヤノン EF50mm F1.2L USM |
6群8枚 | 0.45m | 円形8枚 | 72mm | 85.8×65.5mm 590g |
2007年 | 185,000円 | 販売中 |
キヤノン EF50mm F1.8 STM |
5群6枚 | 0.35m | 円形7枚 | 49mm | 69.2×39.3mm 160g |
2015年 | 19,500円 | 販売中 |
キヤノン EF40mm F2.8 STM |
4群6枚 | 0.3m | 円形7枚 | 52mm | 68.2×22.8mm 130g |
2012年 | 23,000円 | 販売中 |
TAMRON SP45mm F/1.8 Di VC USD<F013> |
8群10枚 | 0.29m | 円形9枚 | 67mm | 80.4×91.7mm 540g |
2015年 | 90,000円 | 販売中 |
SIGMA 50mm F1.4 DG HSM |
8群13枚 | 0.4m | 円形9枚 | 77mm | 85.4×99.9mm 815g |
2014年 | 127,000円 | 販売中 |
このうち、上から2機種は入手が困難な製品です。
というのも製造年数が非常に古く、F1.8は生産期間が短くて(約3年半)、F1.0Lは非常に高価(税抜き366,000円)で販売数が多くなかったからなんですね。同世代のフラッグシップEOS-1HSの販売価格が239,000円ですので、高価さがわかろうというものです。そういえばEOS-1、古いけどいいカメラですよ。
ではレンズの特徴を見ておきましょうか。
キヤノン50mmの基本的な特徴
キヤノンの標準レンズは、レンズ構成や枚数などは異なるものの、基本的にガウスタイプ(ダブルガウス)を採用しています。
このガウスタイプというのは、一眼レフ用の標準レンズで採用されることが多い、スタンダードなレンズ構成です。ミラーレスなどではミラーボックスがないため、そのスペースを必要とする一眼レフ用のレンズ構成とは異なる事が多いです。
また、EOSシステムがデビューした時にいわれていた『こんなにでかいマウントである必要はあるのか?』という回答を示すかのような超大口径レンズを準備しています。
それがEF50mm F1.0L USM(現行はF1.2にモデルチェンジしています)です。
一眼レフのレンズは前述したように制約があります。センサー直前にレンズ後玉を配置できるミラーレスのように自由に設計できるわけではないんですね。なので、前玉だけでなく後玉も大型化出来るEFマウントは大口径レンズ製作に非常に有利なわけです。
現在、一眼レフ用の標準レンズ領域(40-60mm)の中で開放絞り値がF1.2を超えるレンズは『キヤノン EF50mm F1.2L USM』『ニコン Ai Nikkor 50mm f/1.2S』くらいしかありません。ついでに85mm F1.2クラスの一眼レフ用レンズではEFマウント用のレンズくらいしか存在しないんですね。
ミラーレスだと、50mmクラスはけっこう明るいのもあるんですが、85mmクラスはほぼないですね。要求される焦点距離域が異なるという理由もあるでしょうけど。
キヤノン標準レンズの焦点距離は原則として50mmを用意しており、他社のように45mmや43mm・58mmなどの焦点距離のレンズはありません。
EF40mm F2.8 STMはありますけど、パンケーキレンズですので性格が違うレンズです。ただし構成は50mmに変形ダブルガウスタイプを採用しています。
F1.8シリーズ
初代から数えて現行は三代目となりますが、レンズ構成は同じものを採用しています。この構成は、実はFDレンズの頃から変わっておらず、新機構の採用やコストダウン、コーティングの変更などでモデルチェンジが図られているんですね。
ちなみにピント合わせは全群繰り出し方式。全てのレンズが同時に前後に移動します。
ね?同じ構成でしょ?
つまりそれだけ完成されたレンズ構成ということですし、いわゆる『標準的な』使い方で基準にしやすいということでもあるのでしょう。
レンズ構成が変わらないということならば、コーティングが最新のものである『EF50mm F1.8 STM』がこのシリーズの中では最も良い選択ですね。F1.8 IIより10cm近づけるようになったし。
F1.4/F1.2/F1.0クラス
EF50mm F1.4 USM・EF50mm F1.2L USMもピント合わせは全群繰り出し方式です。
これは前後対称構成のダブルガウスを採用しているためでもあるんですね。なので、インナーフォーカス方式(レンズの中央の一部が動いてピントを合わせる方式)と比べると速度的には不利になります。
しかしピント面のシャープさや、アウトフォーカス部の描写の安定性では有利という側面もあります。焦点距離から考える性格としては、デメリットは少ないと考えられます。
EF50mm F1.0L USMはフローティング機構を採用しているということです。あんな量のレンズ全群を動かしてるわけにはいかなかったんでしょうね。フローティング機構というのは、ピント調整時に複数のレンズ群がそれぞれ連動して動く方式のことです。というか、基本的にはズームレンズと同じ機構を持っていると考えるとわかりやすいかも。あんなにレンズ詰まってるのにどこ動かしてたんでしょうかね。
複数のレンズ群を連動させるために、機構が複雑になるのがデメリット。
F1.0LとF1.2Lは開放F値だけ見ると僅かな違いに見えますが、構成はずいぶん違うように見えますね。レンズ枚数も11枚と8枚ですし、非球面レンズの位置も異なります。しかし、大きな構成では凸凹凹凸という前後対称構成の発展形であり、伝統的にこの形式を発展させてきたのがわかります。
レンズメーカー (SIGMA)
ではレンズメーカー製の50mmはどうかというと、まずはシグマArt 50mm F1.4です。
このレンズはダブルガウスを2つ組み合わせたようにもみえる形式ですね。レトロフォーカス(逆望遠)かな。今回の比較にはありませんがOtus 55mm F1.4なんかもレトロフォーカスっぽいので最近の流行りでしょうか。
前後対称構成が基本になるダブルガウスと異なり、補正レンズを入れやすいため光学性能を追求したというArtラインナップとしては自然な選択だったのかもしれませんね。
その代わり重量が同じF1.4のEFレンズ(290g)と比べて3倍近く(815g)になっていますし、フィルター径もF1.4とは思えないほど大きい(Φ77mm)ですが。
レンズメーカー (TAMRON)
これも基本的にはレトロフォーカスを採用しているので、高画質を売りにしているレンズの流行りなんでしょうね。
凹レンズ先行だと周辺光量確保が行いやすそうですが、光線が収束できず、収差が大きく出そうですけどね。この補正のため全体的に中間レンズが前玉並みにあるんでしょうか?F1.8だから?手ぶれ補正ユニットの搭載のためというのもあるでしょうけど。
こちらもF1.8 STM(160g)と比較すると3倍以上(540g)の重量増加です。F1.4 USM(290g)の2倍近いですし。手ぶれ補正のためにどこまで許容できるか、というのも悩みですね。
まとめ
ずいぶん長くなってしまったので、いったんこの辺で終わっときましょう。
ここまでの内容でざっくりいうと、キヤノンのレンズはスタンダートな構成で安定した性能を発揮できる設計を重視しているということ。各ボディ設計などのベンチマークとして利用したりする関係上、大きく冒険するよりは安定した性能に向かうのは納得できます。モデルチェンジごとに性質がガラッと変わるわけにはいきませんからね。
全群繰り出しのレンズは焦点距離にかかわらず同じ描写傾向を示しますので、そういう意味でも安定しているといえそうです。レトロフォーカスを採用している他社レンズは、レンズ構成を色々といじれるので画質追求出来る反面、大きく重くなりがちです。
この傾向がMTFなどで出てくることは少ないでしょうが、知ってても損はないのではないでしょうか。
レンズ選びには重さや大きさ、価格や開放F値、MTFの結果などで選ぶと思いますが、こういったレンズ構成や背景を感じることで、選択の方向性が決まることもあるのかな、ということで書いてみました。
次回はMTF辺り比較してみましょうかね。
ではまた。