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最大撮影倍率とレンズ選び
カメラのレンズを選ぶ際に、焦点距離や解放絞り値、最短撮影距離や重さ、フィルター径を見る方は多いと思うんですが、最大撮影倍率を見る方はどれ程いるのでしょうか?
そもそも最大撮影倍率がどの程度撮影に影響が出るのか分からないという方もいると思います。
と、いうか自分がそちら側なので。
そんなわけで最大撮影倍率について考察していこうと思います。
最大撮影倍率ってそもそも何の事?
最短撮影距離で撮影すると、レンズによって対象(被写体)の大きさが変わってきます。撮像素子(昔でいうフィルムの事)に対して同じ大きさで写るときの事を等倍(1:1)といい、それより小さく写ったり大きく写ったりするようになります。
10円硬貨の直径は23.5mmなので、フルサイズ一眼レフの一般的な撮像素子である24×36mmの場合、等倍撮影が可能なレンズなら短辺にほぼ一杯で写す事が出来る訳です。
撮影倍率と最短撮影距離
最短撮影距離って?
そのレンズが被写体にどこまで近づく事が出来るか、という数値です。
いわゆる最短撮影距離(撮像素子面から被写体までの距離)と、ワーキングディスタンス(レンズ先端から被写体までの距離)がありますが、メーカーホームページ等に掲載されている最短撮影距離は前者となります。
ワーキングディスタンスと最短撮影距離の関係で言うと、今回計測した各レンズは全てEOS 5DMarkⅡで撮影していますので、フランジバック44mm(レンズ取付面から撮像素子までの距離)とレンズの全長(等倍撮影が可能なEF100mm F2.8L Macro IS USMで全長123mm)の合計167mmが大体のレンズ先端までの距離になります。最短撮影距離は30cmなので、残りは133mmです。フードを装着すると、撮影時はフードの先端が被写体に触れそうな程に近づく事になります。
最大撮影倍率が違うとどう違う?
倍率が高ければ単純に大きく写ります。
実は、無限遠(レンズに∞で表示されている最も遠くでピントが合う状態)での撮影は、レンズの焦点距離(100mmとか300mmとかのアレです)によって画角(写る範囲)が決まっているので、同じ焦点距離のレンズであれば価格が違おうがズーム比が違おうが同じ大きさに写るのです。大きさだけなので、レンズによって画質はもちろん異なってくるのですが。
カメラに詳しくない方や、カメラ初心者の方は、望遠レンズは大きく写ると言われて(思われて)いますが、被写体をどれだけ大きく写せるかは、最大撮影倍率にかかっているのですね。ただし、最大撮影倍率に達するための最短撮影距離は焦点距離が長いレンズの方が遠くなるので、同じポイントからの撮影に関して言えば誤解とも言えないわけです。
最大撮影倍率と最短撮影距離の関係性
レンズによって寄れる寄れない、大きく写る写らないがありますので、今回手持ちの動かせるレンズを使って撮影比較をしてみました。
新しめの所有レンズのうち、広角レンズのEF16-35mm F4L IS USMは貸出し中のため、今回のテストには不参加です。
レンズのスペックを表にまとめたので、確認してみましょう。
メーカー | レンズ名 |
最短撮影 距離 |
最大撮影
倍率 |
レンズ構成 | 発売年月 |
メーカー 希望価格 |
TAMRON | SP 70-300mm F4-5.6 Di VC USD | 1.5m | 0.25 | 12群17枚 | 2010年9月 | 60,000円 |
canon | EF75-300mm F4-5Ⅲ USM | 1,5m | 0,25 | 9群13枚 | 1999年4月 | 43,800円 |
canon | EF70-300mm F4-5.6L IS USM | 1.2m | 0.21 | 14群19枚 | 2010年11月 | 158,000円 |
canon | EF24-105mm F4L IS USM | 0.45m | 0.23 | 13群18枚 | 2005年10月 | 145,000円 |
SIGMA | 12-24mm F4.5-5.6Ⅱ DG HSM | 0.28m | 0.15625
(1:6.4) |
13群17枚 | 2011年7月 | 95,000円 |
canon | EF100mm F2.8L Macro IS USM | 0.3m | 1 | 12群15枚 | 2009年10月 | 120,000円 |
canon | EF50mm F1.8 Ⅱ | 0.45m | 0.15 | 5群6枚 | 1990年12月 | 12,000円 |
SIGMA | 28-70mm F2.8 EX ASPHERICAL | 0.4m | 0.24 | 12群15枚 | 1998年7月 | 65,000円 |
canon | EF24-85mm F3.5-4.5 USM | 0.5m | 0.16 | 12群15枚 | 1996年9月 | 58,000円 |
canon | EF28-80mm F3.5-5.6Ⅴ USM | 0.38m | 0.26 | 10群10枚 | 1999年4月 | 26,000円 |
SIGMA | 17-35mm F2.8-4 EX DG ASPHERICAL HSM | 0.27m | 0.45 | 13群16枚 | 2004年1月 | 70,000円 |
表の順番は特に他意はありません。強いて言えば、長焦点距離の最大撮影倍率に関心があって始めたテストなので、300mmを最初に持ってきたくらいです。
後は、発掘して出てきたレンズが混じってるので(笑)その辺が順番を乱しています。
最短撮影距離の比較
300mmクラスでの比較
- SP 70-300mm F4-5.6 Di VC USD
- EF75-300mm F4-5Ⅲ USM
- EF70-300mm F4-5.6L IS USM
一枚目のタムロン70-300はコントラストも高く、かなり近寄れている感じがあります。同様の最短撮影距離を持つキヤノン70-300(二枚目)は最大撮影倍率が同じこともあって、大きさはほぼ同じ。ですが、逆光の影響をモロに喰らったのかコントラストはかなり低くフィルム向けのコーティングのせいか、若干色被りしています。
三枚目のキヤノン70-300Lは最短撮影距離でも最大撮影倍率の低さから、小さく写っているのがわかります。コントラストや色ノリはさすがLといったところですが、あまり寄れてないですね。四枚目は前述の2枚と比較するために1.5mの位置から撮影。これはかなり小さい。
標準から中望遠クラスのでの比較
- EF24-105mm F4L IS USM
- EF24-85mm F3.5-4.5 USM
- EF28-80mm F3.5-5.6Ⅴ USM
- 28-70mm F2.8 EX ASPHERICAL
- EF50mm F1.8 Ⅱ
キヤノンの24-105はデジタル世代向けの標準レンズということで、設計が古くなってきたと言われつつもしっかり寄れているのがわかります。色ノリ・コントラスト・ボケとも上のレンジでまとまっていて、安心して常用できるレンズです。これを基準に見てみると、古いレンズである24-85は、最大撮影倍率0.16ということで、かなり小さく写っています。最短撮影距離も50cmとテーブルフォトなどでも撮影に苦慮する距離ですね。反面、古い割にはコントラストが高く、最大撮影倍率や最短撮影距離を気にしない場面では充分に常用できるコンパクトレンズです。
キヤノン28-80とシグマ28-70は結構寄れるし、大きく写るんですが……描写にはかなりクセがあります。28-80はコントラストを高めに設定すればまぁまぁイケルと思うんですが、シグマはボケも後ろはトロケるような感じですが、前ボケが二線ボケ傾向にあります。ノスタルジックな仕上がりを狙うなら、良い選択になりそうですが。
手持ちの中で最も安価なキヤノン50mmですが、撮影倍率的にも最も低く(0.15)なっています。この金額であれば写りは申し分ないので、さすがは撒き餌レンズとまで言われたレンズだなと思います。ちょっとしたスナップ向けには全く問題無いでしょう。
広角域での比較
- 17-35mm F2.8-4 EX DG ASPHERICAL HSM
- 12-24mm F4.5-5.6Ⅱ DG HSM
純正が出払っているので、2本ともシグマのレンズです。焦点距離も大きく違うので、単純比較はできませんが、17-35の0.45倍は実際どうなのかな?そんなに出てないような気もしますが。いずれにしても、広角でここまで拡大できれば充分な範囲だと思います。
三枚目は12mmでの撮影です。かなり寄ってもこの大きさなので、さすがは超広角。
等倍撮影時の状態
- EF100mm F2.8L Macro IS USM
文句つけると石が飛んで来るレベルですね。
参考に等倍撮影したものですので、マクロだとここまで寄れるのか、と思いっていだければ幸いです。
まとめ
いかがでしょうか。個人的には、予想していたとはいえ撮影倍率の違いで結果が変わることに改めてショックを受けました。
しかし、倍率が低いとはいっても300mmで最短撮影距離の1.2mは魅力的でもあります。この距離ならカメラを構えて足元の撮影が出来るのです。1.5mだと、平均的な身長の男性でも厳しいでしょうし、女性なら絶望的です。テーブルフォトに長望遠域のレンズを持ち出すことはないと思いますが、ピントさえ合わせられれば後でトリミングして必要な倍率に上げることも出来ますから、潰しが効く使い方は出来る訳です。トリミング絶対しない人もいますので、撮影時の倍率を求める人を否定はしません。通常は倍率が確保できる方が撮影は楽だと思います。
前述の最短撮影距離でのトリミングは、背景がボケることが多いのでそうそう問題にならないとは思いますが、実際は背景まで含めた撮影を行う事になりますので、利用頻度の多い撮影距離の把握もしておいた方がいいかもしれません。
撮影倍率とは関係ない事ですが、今回は窓からはいる光が逆光となって撮影条件が厳しくなってしまいました。晴天順光でのテストなら撮影印象も違ったかもしれません。しかし、古いレンズはデジタル向けのコーティングがなされていない分、面白い発色をする事を再認識しました。オールドレンズ収集に走りそうです(笑)
そんなわけで、今回はここまで。
ではまた。