みなさんこんにちは
キヤノンのフラッグシップ一眼レフ、EOS-1Vの出荷が終了したというニュースが出ました。
個人的には非常に残念なニュースです。
『キヤノンEOS、その遥かな極みへ。』
2000年3月に登場したEOS-1Vは、前機種(EOS-1N)からの正常進化モデルです。
連続巻き上げ速度は単体でAiサーボ3コマ/秒(ワンショット3.5コマ/秒)ですがHSモード(パワードライブブースターPB-E2装着+ニッケル水素パックNP-E2使用時)の超高速モードで9コマ/秒のAF追従(ワンショット10コマ/秒)が可能です。
36枚撮りのフイルムを使用するので、Aiサーボだと4秒でフイルム交換です。シャッターチャンスに強い代わりに次々とカネを飲む、アマチュアには垂涎の的でした。ネガフイルム+現像代で当時1,000円くらいだったと思うのですが、それにしても4秒ごとにそれだけかかるのです。パチンコなどのギャンブルなんてやっている余裕はないのです。
撮影データの保存ができるのも憧れでした。
それまで、データが必要な撮影はメモ帳に手書きです。フイルム番号・シャッター・絞り・ストロボの有無・補正量……etc.
今ではExifデータで当然のように受け取っている情報も、当時は当たり前ではなかったのです。現像するまで結果が見えないフイルムですから、この撮影データは失敗も成功も次回の撮影になくてはならないものでした。
あらゆる点を最高峰に持ち上げたEOS-1Vですが、その後継が発売されることはありませんでした。
EOS-1の歴史
年と月は発売時期です。青文字はフイルム一眼レフ、赤文字はEOS-1V、緑はデジタル一眼レフを表しています。
1989. 9 EOS-1/HS
1994.11 EOS-1N/HS/DP
1995. 7 EOS-1N RS
2000. 3 EOS-1V/HS
2001.12 EOS-1D
2002.11 EOS-1Ds
2004. 4 EOS-1D Mark II
2004.11 EOS-1Ds MarkII
2005. 9 EOS-1D Mark II N
2007. 5 EOS-1D mark III
2007.11 EOS-1Ds Mark III
2009.12 EOS-1D Mark IV
2010.10.31 EOS-1V 生産終了
2012. 3 EOS-1D X
2012.12 EOS-1D C
2016. 4 EOS-1D X Mark II
2018. 5.30 EOS-1V 出荷終了
2020.10.31 EOS-1V 修理部品確保期限
2025.10.31 EOS-1V 修理受付終了
このように、フイルム一眼レフのフラッグシップEOS-1Vが登場した翌年には、デジタル一眼レフのフラッグシップEOS-1Dが登場しています。しかもそれまで5年程度のスパンがあったモデルサイクルも3年程度(シリーズごと)と短くなっています。
デジタルの進化の速さもありますが、特にフイルム使用量の多いプロユースの製品はコストパフォーマンスに優れるデジタル一眼レフへの期待も高かったですね。それでも『写真はフイルムだ』という声は長く続いていました。
大きく転換したのはいつ頃でしょうか。
フイルム一眼レフからの脱却
報道分野での普及は早かったようですが、それ以外でのカメラマンはどうだったのでしょうか。
個人的な間隔で大変恐縮ですが、その時期は大きく2つあると感じています。
ひとつはEOS-1Ds Mark II(2004年11月発売・1670万画素)です。フルサイズセンサーでこの画素数を確保し、かつ常用ISO感度1600を実現しています。本体価格は90万円前後で非常に高かった製品ですが、EOS-1Ds Mark III(2007年11月発売・2110万画素)と併せてポートレート・スタジオ系の撮影では一気に普及したような気がします。
もうひとつがEOS 5D Mark IIの登場です。2005年10月に登場したEOS 5D(1280万画素)の後継として2008年11月に登場しました。こちらは価格帯が30万円前後でかつ常用ISO感度もISO6400まで可能で、大伸ばしを要求される撮影用途でも広く採用されたと感じています。
僕もEOS 5D Mark IIからほぼ完全にデジタル化したクチです。それまでEOSはEOS-1と1N、5、55を使っていました。
2009年10月にはEOS 7Dの発売が始まり、8コマ/秒の高速連写が一般ユーザーにも手に届く価格で実現すると、EOS-1Vの持っていた堅牢性・高速連写は分担されながらもその役割を急速に終えていったことがわかります。
キヤノンはフイルムカメラを作るのか
これはわかりませんが、おそらく作ることはないと思います。
新規の設計を行えば、最新の技術に対応するカメラにせざるを得ないでしょうし、その開発費を回収できるほど販売数が伸びると思えません。
ニコンのような入門用(FM10のこと。OEM機ですが)を発売するとも思えませんし、そもそも機械式シャッターをEOSでは採用していませんしね。
幸いにして2025年10月31日までは修理対応を行ってくれる(規約の2020年10月31日以降は在庫状況次第)とのことなので、部品との相談にはなりますが、もうしばらく使い続けることはできそうです。
まとめ
奇しくも2018年はEOS Kiss Mの発売で、キヤノンもミラーレスカメラへ舵を大きく切った年になりそうです。
昨年2017年はEOSシステム30周年でしたし、フイルム一眼レフからデジタル一眼レフ、そしてミラーレス一眼と続く流れの中で、EOS-1Vの販売終了は象徴的な出来事として記憶に残りそうです。
新品のフイルムEOSは今しか手に入らないことを考えると、欲しい人には最後のチャンスです。迷わず確保しておきたいですね。
ではまた。